平河町通信 第二号 補足ページ

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【法制審議会の中間試案に対して訴えたいこと】

法制審議会の中間試案では、提示された 3 案とも、いわゆる「キラキラネーム読み」や「英語読み」の名前が多数出現する恐れがあり、それらは、すべて「字義(文字の持つ意味)との関連性があれば認める」という抽象的で曖昧な要件によるものです。つまり、漢字の読み方についての、これまでのルールが崩れてしまうのです。本来の漢字の意味とは関係ない読み方が「公認」されることによって、漢字文化どころか「ひらがな」を含む日本語文化自体が崩れてしまうことにもなります。以下に参考となる考え方を例示しますので、皆さまご自身の真摯な声を法務省民事局に意見として届けてください。

●「字義との関連性」がある読み方を認めるということになると、「関連性」という表現が抽象的であるため、際限なく許容範囲が広がってしまうのではないか。戸籍の登録管理を「ひらがな」や「カタカナ」でデジタル化するのであれば、漢字文化・日本語文化を守るためにも、「読み仮名」の付け方、つまり「読み方」には、しっかりしたルールを設けるべきである。

●「字義との関連性」がある読み方を認めるということになった場合、「関連性」があるかどうかは極めて抽象的な基準であり、「個人の主観」で判断できことになる。このため、自治体の受付窓口の職員は、届けた側から「関連性」があると主張されれば、そのまま受け入れざるを得なくなるのではないか。
●「字義との関連性」がある読み方を認めるという曖昧な要件のままでは、国民は「関連性がある」と主張
すればどんな読み方でも認められるのだと解釈してしまう。役所の窓口では、「関連性」の基準がないから、公序良俗に反しない限り、どんな読み方でも受理せざるを得ない。事実上のノーチェクになる。

●「字義との関連性」がある読み方であれば認めるということになった場合、届けられた読み方が適正かどうかを専門家でもない役所の窓口職員が判断することは困難である。事実上、どんな読み方でも受理せざるを得なくなり、「何でもあり」の状態になって、日本語の乱れを加速させることになる。

●「字義との関連性」がある読み方であれば認めるということになると、国民は「関連性」があるという主観によって判断し届けることになる。役所の窓口には「関連性」を疑う届けが殺到し、職員個人では即決できない事例が重なって大混乱する。

●「字義との関連性」がある読み方であれば認めるということだが、「関連性」とは極めて抽象的な概念であり、基準が明確ではない。届け出る際に、どこまでが「字義との関連性」のある読み方なのか国民も判断に迷ってしまう。

●「字義との関連性」があると判断して届け出た「読み方」が役所の窓口で拒否された場合、異議(不服)申し立てが行われ、家庭裁判所に提訴するケースも出てくるかもしれない。そもそも「字義との関連性」という極めて曖昧な基準が問題なのであり、「悪魔」くんの名前を「公序良俗に反する」として認めなかったケースとは異なって、裁判所は判例がないこともあって難しい判断を迫られるのではないか。

●例えば、新聞報道などで話題になっている「光宙(ぴかちゅう)」の読み仮名について、これを「字義との関連性」があるとして認めた場合、漢字が本来持っている意味を超えてしまい、単に時流に乗っただけの読み方になる。漫画やドラマで流行っている登場人物の名前に合わせた奇異な漢字の名前が続出することが考えられる。

●法制審議会の中間試案は、「光宙(ぴかちゅう)」のような、いわゆるキラキラネームを後押しする結果になる。親の勝手な趣味で付けられた「読み方」が現実に社会で広く受け入れられるとは思わない。その場合、被害を受けるのは、やがて自我に目覚めるであろう子ども自身である。

●文字の持つ意味としての「字義」との関連性が認められるものとして「大空(すかい)」の例がマスコミ等で紹介されている。このような英語の発音を漢字の「読み仮名」として認めると、漢字を英語で読むことになってしまう。そもそも、英語の日本語発音を漢字の「字義」と関連させる解釈はおかしい。これは、漢字文化の破壊であるだけでなく、「ひらがな」文化の破壊につながる。

●「大空(すかい)」を「字義との関連性がある」として認めるとなると、英語の「sky」には「空」の意味のほか、「天」「天国」「気候」「風土」などの意味もあるため、「天(すかい)」「天国(すかい)」「気候(すかい)」という名前の呼び方も認めなくてはならない。

●今回の試案はいずれも「漢字の読み方についてのルール」が崩れることになり、漢字を初めて習う小学校の低学年や多くの漢字を学ぶ中学生の学校教育に大きな混乱をもたらす。今回の中間試案をまとめるにあたっては、法的な観点ばかりで議論が行われている気がする。果たして、どれだけの国語学者や日本語研究者から意見を聴いたのか疑問が残る。

●子どもにとっての知育の基礎は「言葉」であり、小さな頃から日本語の表現(読み方)の原則をしっかり教えていくことが何よりも大切なのだが、今回の中間試案では、読み方のルールが崩れてしまい、子どもたち自身が学習する中で混乱してしまう。法務省は、そうした子どもたちへのマイナスの影響をまったく考慮していない。

●いわゆる時流に乗ったキラキラネームが流行すると、子どもたちが成長した時には流行遅れとなって、
特殊な読み方を友だちから嘲笑される場合が出てきてもおかしくない。それが、いじめになったり、子どもの間のトラブルにつながることも予想される。

●法務省にとっては、あくまでも「読み仮名」が「主」であり、漢字は「従」であって、漢字を補足情報としてしか認識していないのではないか。戦後間もなく、漢字やひらがなを廃止して、英語を国語にしようと主張した文化人がいたが、これにも通じるような危うさを感じる。

●戸籍の氏名のデジタル管理は、名前の読み仮名(ひらがな又はカタカナ)で行うため、漢字は「補足の情報」に過ぎなくなる。極端な言い方をすると、その読み仮名さえも補足の情報となり、極端なことを言えば「個人識別番号」さえあれば良いという考え方につながることを危惧する。

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